改訂新版 世界大百科事典 「馬跳び」の意味・わかりやすい解説
馬跳び (うまとび)
子どもの遊びの一つで,馬乗りとは内容を異にするが,実際の遊びでは両者は区別しにくい。〈うまつぶし〉〈しからんち〉〈しかあそび〉〈しかつのなんぼ〉〈しゃくりうま〉などと呼ぶ地方もある。〈しからんち〉は〈鹿鹿角何本(しかじかつのなんぼん)〉がつまったもの。この種の遊びを大別すれば次の3種となる。(1)馬事型 1人が馬に扮し,その人馬に乗って遊ぶ。(2)跳越し型 体を前屈し,手をひざに当てて人馬になった人を他が跳び越す。(3)跳乗り型 (1)と(2)の複合型。馬跳びとも馬乗りとも呼ばれ,別称が多い。人馬組Aと跳乗り組Bの二手に分かれ,B組が全員乗り終わったら,A組の立ち手とB組の最後に跳び乗った両人がじゃんけんをする。負けた組が次回の人馬組となる。鹿鹿角何本は,じゃんけんの代りに立ち手が手を挙げ指で数を示しながら,〈しかじかつのなんぼん〉といってその数を当てさせる。《栄花物語》,《台記》文安6年(1449)条などに,馬事型の遊事例が記されているところから,平安期にはすでに流布していた遊びらしい。またブリューゲルの《子供の遊戯》の絵中に,(2)の跳越し型と(3)の跳乗り型の様相が精細に描写されている。この例からも,世界共通の遊びであることがうかがわれる。
執筆者:半澤 敏郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報