魔法使いとその弟子(読み)まほうつかいとそのでし

改訂新版 世界大百科事典 「魔法使いとその弟子」の意味・わかりやすい解説

魔法使いとその弟子 (まほうつかいとそのでし)

世界的分布をもつ変身競争譚。《グリム童話集》では68巻がこれに相当する。息子が魔法使いに弟子入りする。1年たって父親が迎えに来たときに,変身した息子をそれと識別できれば授業料はただ,できなければ多額の謝礼を出すという約束をする。父親は小人援助でかろうじて識別し,魔法使いのもとから2人で逃げる。途中,息子は動物に変身し,父が売っては息子が逃げ帰ることによって金を稼ぐ。市場で息子が,父に手綱を外して売るよう言って馬に変身すると,父はうっかり手綱をつけたまま魔法使いに売る。息子は通りがかりの人に手綱を外してもらってスズメになって逃げると,魔法使いもスズメになって追い,次々と変身競争が始まる。しまいに魔法使いがおんどりに変身すると,息子がキツネになってかみ殺す。この話の主要部分は紀元前後のローマの詩人オウィディウスの《転身物語》の中に現れている。モンゴルの古説話集《シッディ・クール》にもみられる。原郷土はペルシアと考えられている。日本の〈文福茶釜〉は,息子が変身して父が売る部分が笑話化したものと考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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