群馬県館林の茂林寺に伝わる茶釜の話は広く知られている。ムジナが寺僧に化けて,くんでも湯の尽きない茶釜をどこからか持ってくる。福を授けることから分福茶釜と称される。後に茶釜は寺宝になるという話である。茶釜が寺と結びついた伝説は他にも例がある。昔話の文福茶釜には二つの型がある。寺の小僧が茶釜をこすると,痛いぞと声をかける。火にかけると手足が現れてタヌキになって逃げて行くという筋になっている。この話は江戸時代の赤本にある。早くから笑話化して伝えられてきたものであろう。もう一つの型は,爺に危難を救われたキツネ(タヌキ)がその恩返しに茶釜,遊女,馬などに化けて売らせては富を与えるという動物報恩型の話である。爺は博労(ばくろう)になっている例が多い。もともとあったこの話から茶釜だけが独立して,童話化されたのが前者の型であろう。また寺の縁起などと結びついて伝説化したものが茂林寺の話であると考えられる。
執筆者:花部 英雄
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…原郷土はペルシアと考えられている。日本の〈文福茶釜〉は,息子が変身して父が売る部分が笑話化したものと考えられる。【小沢 俊夫】。…
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