世界大百科事典(旧版)内のmimēsisの言及
【演劇】より
…しかし田楽は上演の前半で刀玉(とうぎよく)などの曲芸や美少年の集団歌舞を演じ(これが田楽の元芸である),次いで〈登場人物〉と〈物語=筋〉のある能を演じたのに対し,猿楽は翁猿楽という豊穣祭祀の演劇化を元芸として能を演じていた。折口信夫によれば〈能〉は〈態〉の略字であり,本来〈物まね〉を意味していたから,その意味では,〈能〉とは舞台上演の物まねに基づく部分,つまりアリストテレスならミメーシスmimēsisと説く部分を指すのであって,田楽元芸のようにショー的な部分を〈純粋演戯〉と呼ぶなら,それに対して〈代行型演戯〉を意味していた。 このような二分法は,実は古代ギリシアにも存在したので,すでに触れたディテュランボスは,ディオニュソスへの讃歌をオルケストラにおいて円形に舞われる舞歌によって表すものであり(他のジャンルではコロスは四角に展開した),仮面も衣装もつけず,役を演ずるのでもなかったから,この点で,代行型演戯である悲劇,サテュロス劇,喜劇とは対比されていた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」