日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シラノ・ド・ベルジュラック(Savinien de Cyrano de Bergerac)
しらのどべるじゅらっく
Savinien de Cyrano de Bergerac
(1619―1655)
フランスの文学者。パリの小貴族の家に生まれ、軍隊に入るが、アラスの攻囲戦(1640)で重傷を負い退役する。哲学者ガッサンディの講義に列し、自由思想家(リベルタン)たちと交わる。作品としては、悲劇『アグリピーヌの死』(1654)、モリエールに想を与えたといわれる『衒学者愚弄(げんがくしゃぐろう)』(1654)、トマス・モア流のユートピア小説『月世界旅行記』(1657)および『太陽世界旅行記』(1662)のほか、フロンドの乱の際の、宰相マザラン誹謗(ひぼう)文書などがある。
なお彼の実像は、エドモン・ロスタンの韻文劇『シラノ・ド・ベルジュラック』(1897)によって、巨大な鼻の魁偉(かいい)な風貌(ふうぼう)のなかに、繊細な詩魂を秘めた心優しい剣客として多分に伝説化された。
[渡邊明正]
『有永弘人訳『日月両世界旅行記1・2』(岩波文庫)』
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