あからし(読み)アカラシ

デジタル大辞泉 「あからし」の意味・読み・例文・類語

あから・し

[形シク]胸のしめつけられる思いである。ひどい。
「などか来ぬ、とはぬ、憎し、―・しとて」〈かげろふ・下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「あからし」の意味・読み・例文・類語

あから

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 「あから」は、「あからさま」「あからめ」などの「あから」と同根か ) 思いが切実なさま。痛切な気持である。ひどい。
    1. [初出の実例]「哀しきかな、懇(アカラシキ)かな、我が大師聊かに何か過失有りて、此の賊難を蒙る〈国会図書館本訓釈 懇 アカラシキ〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
    2. 「などか来ぬ、とはぬ、憎し、あからしとて、打ちもつみもし給へかし」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)

あからしの語誌

( 1 )「日本霊異記」や「観智院本名義抄」などで、「懇」字の訓として例が見えるが、現存の他の訓点資料には見出し難い。
( 2 )「日本霊異記」、また、「蜻蛉日記」の例は、いずれも男性の会話の中に認められる。従って、漢文訓読といった文章語の性格は希薄で、むしろ、会話語、口頭語の性格の強いものであろう。「かなし」「にくし」などと並び用いられ、強い不快の感情を示すと解されるのも、このことと関係があろう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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