アゼルバイジャンとパイプライン争奪戦(読み)あぜるばいじゃんとぱいぷらいんそうだつせん

知恵蔵 の解説

アゼルバイジャンとパイプライン争奪戦

アゼルバイジャンはカスピ海周辺の石油・天然ガスパイプライン争奪戦でカギを握っている。アゼルバイジャンの石油に関しては、バクーからチェチェン、ロシア経由で黒海のノボロシスク港に出す北ルート、グルジア経由で黒海のスプサ港に出す西ルート、グルジアのトビリシ経由でトルコの地中海ジェイハン港に出す南ルート(BTCパイプライン)がある。西ルートはアゼルバイジャン国際石油開発(AIOC)の運用で1998年末に完成した。米国が強く推していた南ルートは全長1730kmで採算上不利だったが、石油価格の上昇でBTCパイプラインは2005年5月に開通し、06年6月に初出荷された。カスピ海沿岸の石油がロシアを経由しないで搬出できることは、この地域の国家の独立にとって決定的な意味を持つ。03年10月、ゲイダル・アリエフ大統領から長男のイリハム・アリエフへの権力の世襲が行われた。05年11月の議会選挙では世襲大統領の与党過半数を獲得、勝利したが、欧州安保協力機構の選挙監視団は「不公正」と批判。野党連合は数万人規模の抗議集会を開いた。

(袴田茂樹 青山学院大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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