内科学 第10版 の解説
アディポサイトカインの生理的意義(脂肪由来ホルモンと疾患)
レプチンは,1994年に遺伝性肥満ob/obマウスの原因遺伝子として単離同定されたペプチドホルモンであり,視床下部に直接作用して,強力な摂食抑制とエネルギー消費亢進をもたらす(Friedmanら,1998).きわめてまれであるが,遺伝的にレプチンあるいはレプチン受容体を欠損する家系が存在し,著しい肥満を発症することが報告されている.エネルギー代謝調節以外にも,レプチンは,神経内分泌系,心血管系,免疫系などに多彩な生理作用を発揮し,生体の栄養状態を感知する栄養センサーとして生体の恒常性維持に働くと想定される.一方,脂肪組織を先天的ないし後天的に欠損すると,著しい糖脂質代謝異常が認められ(脂肪萎縮性糖尿病),アディポサイトカインの生理的意義が示唆される.現在,レプチンを用いた高度先進医療が進行中であり,レプチンの少量補充療法が脂肪萎縮性糖尿病を劇的に改善することが報告されている.[小川佳宏・菅波孝祥]
■文献
Friedman JM, Halaas JL: Leptin and the regulation of body weight in mammals. Nature, 395: 763-770, 1998.
Matsuzawa Y, Funahashi T, et al: Molecular mechanism of metabolic syndrome X: contribution of adipocytokines, adipocyte-derived bioactive substances. Ann NY Acad Sci, 892: 146-154, 1999.
Suganami T, Ogawa Y: Adipose tissue macrophages: their role in adipose tissue remodeling. J Leukoc Biol, 88: 33-39, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報