あぶり出し(読み)あぶりだし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「あぶり出し」の意味・わかりやすい解説

あぶり出し
あぶりだし

塩化コバルトの薄い水溶液で白紙に文字や絵を書いておき、その紙を火にあぶって文字などを現す遊び。江戸時代中期に大人の酒席の遊びとして生まれたが、やがて辻占(つじうら)や神社のおみくじに利用され、さらに大人の手から移行して子供の遊び道具となった。江戸時代はおもに明礬(みょうばん)を用い、「礬書文字」と書いて「あぶりだし」と読ませた。酒も用いたが、これは日本で案出したものという。1830年(文政13)刊の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(喜多村信節(きたむらのぶよ)著)に「酒もて物を書き火にあぶる異国の方よりも簡易なり」とあり、酒で紙に書いた隠し文字に各人が銭を賭(か)け、火にあぶって出た文字を当てた者が賭け銭をとる遊びが当時流行したことを示している。

[斎藤良輔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android