道の辻に立って,通りがかりの人の言葉を聞いて吉凶を判断する占い。別称に,朝占夕占(あさけゆうけ)という名があるように,朝方や夕方の人の姿がはっきりしない時刻に行われ,道行く人の無意識に発する言葉の中に神慮を感じとり,それを神の啓示とした。《万葉集》巻十一に〈玉桙(たまぼこ)のみちゆき占にうらなへば〉とあり,起源は古代にさかのぼる。辻占は,後に道祖神や塞の神の託宣とされるようになり,江戸時代の《嬉遊笑覧》には,衢(ちまた)に出て黄楊(つげ)の櫛を持って,道祖神を念じつつ,見えて来た人の言葉で吉凶を占うとあり,黄楊と〈告げ〉が結び付き,櫛という呪物も加えられた。夜,花柳界などを中心に占紙を売り歩いた辻占売はこの流れを引く者で,〈淡路島通う千鳥の恋の辻占〉などと呼び声をあげて縁起の良いものだけを売った。占紙には,あぶり出しや巻煎餅・干菓子・板昆布にはさんだもの,割りばしや爪楊枝(つまようじ)の袋に印刷したものなどがあった。辻は,神仏や妖怪など善悪さまざまな霊的存在の出現する境界的な場所であり,そこに昼と夜の境をなす時間の立つことは,あの世との接点で霊界との交流を果たすことを意味していたといえる。
執筆者:鈴木 正崇
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夕占(ゆうけ)、道占(みちうら)ともいう。夕方、道辻に出てそこを通る人のことばを小耳に挟み、占いをすること。『万葉集』巻四に「月夜(つくよ)には門(かど)に出(い)で立ち夕占問ひ足卜(あしうら)をぞせし行かまくを欲(ほ)り」とあり、古くから行われていた。黄楊(つげ)の小櫛(おぐし)を持ち神を念じながら道行く人の声を聞いたといわれる。伴信友(ばんのぶとも)は『正卜考(せいぼくこう)』のなかで、場所はかならずしも四つ辻とは限らず、また占いは女がするものとは決まっていないと述べている。江戸時代以来、辻占売りというものが現れて、吉凶の文句などを書いた紙片を道行く人に呼び売りするようになった。また辻占のみでなく巻き煎餅(せんべい)やかりんとうに占いの結果を記した紙を挟んで売るものもあった。若月紫蘭(しらん)の『東京年中行事』によると、明治の末ごろ東京市の辻々に赤塗りの自動辻占箱が現れた。箱の穴に一銭銅貨を入れると占い札が出るようになっていた。これがよく売れて日本全国から朝鮮や中国にまでこの箱が設けられたと記されている。
[大藤時彦]
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