日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化コバルト」の意味・わかりやすい解説
塩化コバルト
えんかこばると
cobalt chloride
コバルトと塩素の化合物。酸化数ⅡおよびⅢのものが知られている。
(1)塩化コバルト(Ⅱ) 無水和物のほか、一、二、四、六水和物が知られている。コバルトの微細粉末を塩素中で加熱すると無水和物が得られる。青色の潮解性固体。容易に水に溶けて淡赤色の溶液を、またアルコールに溶けて濃青色の溶液を与える。湿った空気中でも水和して青色から淡赤色に変わる。この性質はシリカゲルなどの乾燥剤のインジケーターとして広く利用されている。水溶液から室温で結晶させると橙赤(とうせき)色の六水和物が、52℃以上では紫色の二水和物が、そして90℃以上では青紫色の一水和物が得られる。
六水和物は構造としては無水和物とはまったく異なり、trans-[CoCl2(H2O)4]・2H2Oと書くべきものである。加熱すれば脱水をおこし、真空中では150℃で無水和物となる。
(2)塩化コバルト(Ⅲ)CoCl3 固体としては純粋な形で取り出されていない。溶液中の組成も不明である。
[鳥居泰男]