日本大百科全書(ニッポニカ) 「イドゥン」の意味・わかりやすい解説
イドゥン
いどぅん
Iðunn
北欧神話の美と青春の女神で、詩の神ブラギの妻。アイスランドの学者スノッリ・スツルソンおよび『スカルド詩』によると、イドゥンは黄金のリンゴを管理している。このリンゴを食べることにより神々は年をとらないが、あるとき彼女とリンゴが巨人の手に渡ってしまい、神々は年をとり始める。神々の協議の結果取り戻しを命じられた悪神ロキは、タカの姿となって巨人の国へ行き、イドゥンをクルミに変えて神々の住むアースガルズへ連れ戻る。巨人はワシになってロキを追うが、待ち構えていた神々に翼を焼かれて死ぬ。このあと巨人の娘スカジの復讐(ふくしゅう)の話へと続いていくが、イドゥンの名はほかのゲルマン種族の間では知られず、ギリシア神話からの借用、あるいはスノッリの創作とする説などもある。
[谷口幸男]