日本大百科全書(ニッポニカ) 「アースガルズ」の意味・わかりやすい解説
アースガルズ
あーすがるず
Ásgarðr
北欧神話のアサ神族が住む地。エッダ詩に断片的に現れるものの、実体ははっきりしない。スノッリの『エッダ』によると、オーディンとその兄弟は人間をつくったのち、世界の真ん中にアースガルズという砦(とりで)をつくり、そこをトロイアとよんだ。神々とその末裔(まつえい)が住み、地上と空中で起こる多くのできごとがそこからくるという。そこにはフリズスキャールブという見晴らし台があり、アースガルズの主神であるオーディンがそこに座って全世界を見晴るかし、人間一人一人の所業をみてすべてを記憶する。城市の真ん中には神殿が建てられ、オーディンの高座のほかに12の座がある。その建物はグラズスヘイムとよばれて地上でいちばんみごとで大きく、内も外も金一色に輝いている。もう一つは女神たちの館で、ビーンゴールブという。ワルハラもまたアースガルズの中にある。そのほか神々は、鍛冶場(かじば)を置いて槌(つち)や金鋏(はさみ)、金敷などのいっさいの道具をつくった。スノッリの『ユングリンガサガ』では、タナイス(ドン)河の東のアシーアの地がアーサランドまたはアーサヘイムとよばれ、その首都がアースガルズだとされているが、これは、神々を神格化された人間とするユーヒメラス説にたっている。
[谷口幸男]