化学辞典 第2版 「イルコビッチ式」の解説
イルコビッチ式
イルコビッチシキ
Ilkovič equation
直流ポーラログラフ法における限界拡散電流を表す基本式で,1934年,チェコスロバキアのD. Ilkovičが最初に導いたのでこの名称がある.滴下水銀電極における拡散過程を膨張する球面への非定常拡散過程と考え,水銀滴の曲率の影響を無視した膨張平面モデル(expanding plane model)を用いると,25 ℃ における限界拡散電流 id(μA)は,次式で表される.
id = 709ncD1/2m2/3t1/6
ただし,nは電極反応に関与する電子数,cは減極剤の濃度(m mol L-1),Dは減極剤の拡散係数(cm2 s-1),mは毛管からの水銀の流出速度(mg s-1),tは水銀滴が膨張をはじめてから経過した時間(s)である.拡散電流の値は,m,tなどが一定ならば,減極剤の濃度cに比例する.なお,イルコビッチ式では無視された,水銀滴の曲率の影響を考慮した膨張球モデル(expanding sphere model)を用いるイルコビッチ式の修正式も導かれている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報