溶液、混合気体、固溶体など、広い意味での溶体における成分の組成を表す量。いろいろな表し方があるが、次のような値がもっとも多く用いられる。
[中原勝儼]
重量パーセントともいう。溶液100グラム中に含まれる溶質のグラム数で、その溶質の質量百分率を表す。たとえば塩化ナトリウム10グラムを水90グラムに溶かしてつくった水溶液は、10パーセント塩化ナトリウム水溶液である。パーセント濃度というときは、この質量百分率をさすことが多い。
[中原勝儼]
容量パーセントともいう。溶液100ミリリットル中に含まれる溶質の混合する前のミリリットル数で、その溶質の体積百分率を表す。ただし、エタノール(エチルアルコール)と水のように、混合することによって体積変化をおこす場合は、混合前の体積により溶液としての値を決める。たとえば、エタノール90ミリリットルと水10ミリリットルとを混合した溶液は、体積が減少して100ミリリットルにならないが、エタノールの90パーセント溶液という。
[中原勝儼]
溶媒1000グラム中に溶けている溶質の量をモルで表したとき重量モル濃度あるいは質量モル濃度という。たとえば、酢酸(CH3COOH=60)60グラムを1000グラムの水に溶かした溶液の重量モル濃度を1モルという。また溶液1000ミリリットル中に溶けている溶質のモル数で表したものを単にモル濃度あるいは容量モル濃度といっている。たとえば、酢酸60グラムを水に溶かして1000ミリリットルとしたとき、容量モル濃度で1モルである。単にモル濃度というときは容量モル濃度であることが多い。
[中原勝儼]
酸および塩基の濃度を表すのに広く用いられ、溶液1000ミリリットル中の溶質のグラム当量数で表す。たとえば、水酸化ナトリウム(NaOH=40)の1グラム当量40グラムを水に溶かして1000ミリリットルの溶液としたものが1規定であり、硫酸(H2SO4=98)の1グラム当量49グラムを水に溶かして1000ミリリットルの溶液としたものが1規定である。記号はNであり、1規定は1Nのように表す。
[中原勝儼]
以上のほか、溶質のモル数を溶液全体のモル数で割ったモル分率、あるいはそれを百分率で表したモル百分率、さらには溶質のグラム数を溶媒のグラム数で割った重量比、溶質のモル数を溶媒のモル数で割ったモル比、溶液1000ミリリットル中に含まれる溶質のグラム数で表す質量濃度なども用いられる。また、溶質1モルが含まれる溶液のリットル数、すなわちモル濃度の逆数である希釈度で示すこともあり、混合気体などでは、その分圧で濃度を示すこともある。溶質の量がきわめて低いとき、溶液との重量比で表し、百万分率(ppm=parts per million)あるいは10億分率(ppb=parts per billion)で表すこともある。
[中原勝儼]
数学用語。集合の元の個数のことであり、基数ともカージナル数cardinal numberともいう。100個の席をもつ室に三つの空席があれば、97人が室内にいることがわかる。一つの席と1人の人がちょうど一つずつ対応しているからである。二つの集合AとBの間に、Aのおのおのの元にそれぞれBのちょうど一つの元を、Bのおのおのの元にAのちょうど一つの元を結び付けることができるとき、AとBの間には一対一の対応があるという。N個の元をもつ有限集合は、自然数の集合{1,2,……,N}との間に一対一の対応がある。一対一の対応の概念を用いて、無限集合を含む一般の集合の濃度の概念を与えたのはG・カントルである。二つの集合AとBの間に一対一の対応があれば、AとBの濃度は等しいという。Aの部分集合A´とBの間には一対一の対応があるが、AとBの間には一対一の対応がないとき、Aの濃度はBの濃度より大きいという。自然数の全体、整数の全体、有理数の全体などは同じ濃度をもち、これらの濃度を可算濃度という。可算濃度の集合を可算集合という。自然数の集合の全体、自然数から自然数への関数の全体、実数の全体の三つの集合も同じ濃度をもつ。これらが可算濃度より大きいことを、カントルは対角線論法を用いて証明した(1874)。同じ論法を用いて、彼は「集合Aの部分集合の全体からなる集合は、Aよりも大きい濃度をもつ」ことを証明した。この結果、無限濃度が無限個存在することがわかる。可算濃度より大きい濃度を非可算濃度という。無限濃度をアレフ数ともいう。
[西村敏男]
数学用語。個数としての自然数の概念の拡張で,集合論の基本的概念の一つ。集合AとBとの間に1対1の対応があるとき集合AとBとは同じ濃度をもつという。集合Aが有限集合のときはその元の個数によって濃度を表す。すなわち集合{a}の濃度は1,集合{a,b,c}の濃度は3である。また空集合の濃度は0と定義する。集合Aの濃度を表すのにCardA,♯(A),|A|などの記号が用いられることが多い。自然数全体の濃度をaまたはℵ0で表し,可算(または可付番)無限の濃度といい,有限の場合を含めて可算(または可付番)の濃度という。正の偶数全体は自然数全体と1対1の対応がつき,したがって可算濃度をもつ。このように無限集合を考える場合は,A⊊BであってもCardA=CardBである場合があるので注意を要する。実数全体の濃度をcまたはℵで表し,連続または連続体の濃度という。濃度は,カージナル数cardinal number,またはアレフaleph数とも呼ばれる。
二つの濃度m,nに対し,m=CardA,n=CardB,A⊃Bである集合A,Bが存在するとき,mのほうがnより大きいか等しいという(m≧n)。m≧nであり,m≠nのとき(すなわちAとBとの間に1対1の対応がないとき),mのほうがnより大きいという(m>n)。a<cであることは対角線論法によって示すことができる。
濃度m,nに対して,m=CardA,n=CardB,A∩B=空集合である集合A,BをとってCard(A∪B)を考えると,これはm,nによって一意的に定まる。これをmとnの和といいm+nと記す。また直積集合A×Bの濃度をmとnの積といい,mnと記す。配置集合Ab(すなわちBからAの中への写像全体のなす集合)の濃度をmのnべきといい,mnと記す。これらはm,nによって一意的に定まる。例えば2a=cである。濃度の和と積に対しては交換法則,結合法則,分配法則が成立し,べきに対しては指数法則が成立する。
執筆者:上野 健爾
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単位体積中に含まれるある物質の量.物質の濃さの表現法にはモル濃度,質量モル濃度,重量パーセント,体積パーセント,ppm,ppbなど種々あるが,単に濃度といえばモル濃度を意味する.国際単位系(SI単位)では,物質量の基本単位としてモル(mol),長さの基本単位としてメートル(m)を採用している関係上,濃度の単位は mol m-3 であるが,現在一般には,モル濃度の単位として
M = mol L-1 = mol dm-3
が広く用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…すなわち,BSはSからBの中への写像全体である。
[濃度]
集合に属する元の多さを示す概念に濃度(またはカージナル数)と呼ばれるものがある。集合Mの濃度は,♯(M),|M|,CardMなどの記号で表されるが,それは次のように定義される。…
※「濃度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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