日本大百科全書(ニッポニカ) 「インシーケンス衝上断層」の意味・わかりやすい解説
インシーケンス衝上断層
いんしーけんすしょうじょうだんそう
in-sequence thrust
衝上断層帯で、衝上断層によって上側のブロック(上盤(うわばん))が移動するのと同じ向きに、順番に形成された一連の衝上断層群。大規模な衝上断層帯では、新しい衝上断層が古い衝上断層の下側のブロック(下盤(したばん)側)につくられ、新しい衝上断層が古い衝上断層を背負う形で、後背地側から前縁地側に次々と形成される。これは、ピギーバックpiggyback型の衝上順序とよばれる。このピギーバック型の衝上順序で形成される一連の衝上断層をインシーケンス衝上断層とよぶ。スコットランドのカレドニア造山帯のモイン衝上断層帯や、北アメリカのコルディエラ造山帯の褶曲(しゅうきょく)‐衝上断層帯などの古い大規模な衝上断層帯は、基本的にインシーケンス衝上断層からなる。また、プレートの沈み込みに伴う付加コンプレックス(岩石の集合体)形成においても、インシーケンス衝上断層が基本である。なお、このインシーケンス衝上断層の順番からはずれて、後方から新たに大規模な衝上断層が形成されることがあり、これをアウトオブシーケンス衝上断層という。
[村田明広]