日本大百科全書(ニッポニカ) 「イードル・フィトル」の意味・わかりやすい解説
イードル・フィトル
いーどるふぃとる
‘Īd al-fir
イスラム教の二大祝祭の一つ。「断食(だんじき)明けの祭り」のことで、「小祭」ともいわれる。トルコでは、この祭りで砂糖菓子が贈り物として交換されることから、「砂糖祭」ともよばれる。この祭りは、ラマダーン月の翌月、シャッワール月(イスラム暦第10月)1日から数日間行われる。「断食の喜捨(きしゃ)」を未納の者は、遅くともこの1日に納めることが義務づけられている。この祭りには、祝祭特有の礼拝(サラート)、つまり普段の金曜日の礼拝より古い形式をとどめる礼拝が行われる。ラマダーン月の1か月にわたる断食(サウム)の苦行を終えた喜びのため、「小祭」の名に反して、「大祭」以上ににぎやかに祝われる。人々は最上の服で着飾り、互いの家を訪れ、贈り物を交わす。「大祭」と同様に、「小祭」の際にも死者供養が行われ、人々は墓地を訪れ、ときにはコーラン読誦(どくしょう)者に墓前でコーランを読誦してもらう。
[小田淑子]