苦行(読み)くぎょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

苦行
くぎょう

なんらかの宗教的体験,宿願の達成を追求するため,瞑想,断食,不眠その他の難行,荒行などによって身体を自虐的に苦しめる宗教上の行為。禁欲とほとんど同義に用いられることもある。キリスト教では求道者が霊の浄化をはかり,また主イエスの受難をわが身に味わうためにさまざまな苦行をなした。古代インドでは一般にタパス tapasと呼ばれたが,タパスは元来熱を意味し,バラモン教では苦行によって身体に熱が集積し,一種の「力」が発せられると考えられていた。仏教の古い典籍では苦行を肯定的に述べたり,否定的に述べたりしているが,次第に否定するようになったとみられる。ジャイナ教でも苦行は顕著である。

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デジタル大辞泉の解説

く‐ぎょう〔‐ギヤウ〕【苦行】

[名](スル)
つらさに耐えて仕事をすること。「難行苦行
仏語。激しく肉体を苦しめる行いによって精神を浄化し、悟りを得ようとする修行。

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百科事典マイペディアの解説

苦行【くぎょう】

自発的に身体を苦しめることによって信仰を強化し,宗教的至福に達しようとする宗教的修行。霊と肉との闘争を認める二元論が根拠となる。特に現世の苦が来世の楽につながると考えるインドのヒンドゥー教で盛ん。仏教では基本的に重視しないが,日本では寒行回峰行などが行われ,特に真言宗修験道で盛ん。キリスト教では古代・中世修道者に苦行を行った者がいるが,一般的には多くない。

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世界大百科事典 第2版の解説

くぎょう【苦行】

広義には自己統一と精神性の開発を目的とする自己修練をさすが,厳密な苦行は肉体を精神的至福に対立する悪とみなし,精神的至福を得るために自発的に身体に苦痛を与える宗教的手段をいう。肉体に苦痛を与える宗教的手段として未開民族にもよくみられるものには,成年式のさい青年に苦痛を与える割礼(かつれい),抜歯をはじめ,毒草を身体になすりつけたり,アリに身をかませたりする方法があるが,これらは集団が他律的に青年に課するもので,苦行とは区別される。

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大辞林 第三版の解説

くぎょう【苦行】

( 名 ) スル
つらく骨の折れるおこない。苦痛。 「難行なんぎよう-」
〘仏〙 肉体にきびしい苦痛を与え、それに耐えることによって悟りを得ようとする修行。断食・不眠など。 「 -僧」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

苦行
くぎょう

肉体的欲求を抑えて、自虐(じぎゃく)的に身を痛め、堪えがたい修行に励む宗教的行為で、現世の罪や穢(けがれ)を免れて、人格を完成し、あるいは宿願を達成し、また生天(しょうてん)(天に生まれること)の栄光を得ようと試みる。もとインドにおいて仏教外の宗教行者が、悟りを得るためになした修行をいう。古代インドでは苦行はタパスtapas(熱力の意)とよばれた。それは節食と荒行(あらぎょう)に大別される。前者は減食、菜食から断食(だんじき)に及び、後者は火や淵(ふち)に身を投げたり、灰や棘(いばら)や牛糞の上に臥(ふ)したり、呼吸を止めるなどさまざまな行為がある。苦行の場としては人里離れた林間が選ばれ、苦行林と称した。この苦行によって、修行者は死後の生天を確実にし、神を喜ばせて願い事を達成し、千里眼などの神通(じんずう)を得、さらには延命や生殺までも図った。万能なタパスも、布施(ふせ)や祭祀(さいし)など他の生天倫理に比べると、利己的で非社会的であったうえに、その目的が世俗的であり、またその方法が魔術性に満ちていたので、やがて出現した哲学的な知見に優位をとってかわられた。同じ理由で仏陀(ぶっだ)(釈迦(しゃか))も苦行を排した。仏陀は出家して禅定(ぜんじょう)を学んだが満足せず、さらに6年間、あらゆる苦行を行った。しかし激しい苦行によって最高の知見、心の平安に達せず、極端な苦行は身を損なうだけで悟りの道ではないとそれを捨てた。後の仏教も、形式的な苦行は排したが、その精進(しょうじん)、忍耐の精神だけを取り入れ、布施や慈悲など仏道にかなった目的のための難行(なんぎょう)や、修験者(しゅげんじゃ)が行う荒行も苦行と称して大いに尊重した。[辛嶋静志]
『原実著『古典インドの苦行』(1979・春秋社) ▽日本仏教学会編『仏教における行の問題』(1965・平楽寺書店)』

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