日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウオツリグモ」の意味・わかりやすい解説
ウオツリグモ
うおつりぐも / 魚釣蜘蛛
angler spider
節足動物門クモ形綱真正クモ目コガネグモ科のオーストラリア産のジクロスチクス属(ウオツリグモ属)のある種の俗称。単純な糸網につかまり、歩脚で粘球のついた糸を垂らし、ときにはこれを振り回してガなどが付着すると釣り上げるクモで、3種ほど知られている。餌(えさ)になるのは決まったある種のガの雄であるが、これは、粘球にガの雄に対する誘引物質があるものと考えられている。これと似た習性をもったクモにアメリカ産のマストフォラ属やアフリカ産のクラドメレア属の種類があり、ともにナゲナワグモ(ボーラススパイダーboras spider)とよばれている。また、インド、スリランカ、日本などにすむマメイタイセキグモもよく似た習性をもっている。なお、世界各地に広く分布しているハシリグモ類のある種のものも、前脚で水面をたたいて魚をおびき寄せてとらえるのでフィッシングスパイダー(ウオツリグモ)fishing spiderとよばれており、アメリカ産のムツボシハシリグモが有名。しかし釣り糸は垂らさないのでウオツリグモと訳すのは適当ではない。この類をフィッシュキャッチングスパイダーfishing catching spiderとよぶ国もあり、ウオトリグモの名がふさわしいが、日本ではすでにハシリグモという和名が与えられている。日本産のハシリグモ類には、これらの習性はまだ知られていない。
[八木沼健夫]