日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウロコゴケ」の意味・わかりやすい解説
ウロコゴケ
うろこごけ
[学] Heteroscyphus argutus (R., B. et N.) Schiffn.
コケ植物苔類(たいるい)綱の一群であるウロコゴケ類の代表種。ウロコゴケ類の植物体はすべて茎葉の分化があり、直立するか横にはう。茎は数細胞の直径をもつものから、皮層、内層の分化した多数の細胞からできているものまであるが、いずれも通道組織はない。葉は茎の頂端細胞が3分裂し、各分裂面に1葉できるので、基本的には3列につく。種類によっては腹面に面したほうの分裂面がごく狭くなり、葉が形成されず、二列生の葉をもつ。細胞内には葉緑体のほかに油体をもつものが多い。生殖器官のうち、造卵器は茎または枝の先端につき、これを保護する花被(かひ)が発達する。胞子体は球形の蒴(さく)をもち、熟すと4裂する。三十数科に分類され、約5000種が知られている。代表種であるウロコゴケは、本州、四国、九州から台湾にかけて分布し、低地の湿った岩上や土上に生育する。葉の先はいくつかの歯をもち、腹葉は小形。胞子体は茎の腹面から出る短枝の先につく。
[井上 浩]