翻訳|sporophyte
胞子をつくる無性世代の植物体。造胞体ともいう。配偶体の対語。ふつう接合子から発生し,体上に胞子囊をつけ,その中に胞子を生じる。核相は一般に複相である。藻類の一部にはボルボックス,アオミドロ,シャジクモなどのように胞子体を欠くものもある。藻類の胞子体は糸状,軸状,葉状などで単純な構造であるが,コンブ類のように長さ50mにも達し,ある程度器官の分化が認められるものもある。菌類の子実体も胞子体の一部である。コケ植物では一般に小さく,体制も単純で,葉緑体を欠き,配偶体上に寄生する。維管束植物の胞子体は維管束をもち,大型で,屋久杉,セコイアなどのような巨木もある。茎,根,葉または花の器官に分化し,内部組織も複雑で,精巧な体制をもつ。維管束植物の胞子体は4億年におよぶ歴史の中で,軸状の単純な体制から,組織,器官が高度に分化した被子植物にみられるような体制へ進化してきた。
→世代交代
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…生殖器官が多細胞で,受精卵が母体内にとどまり,その後の発生も母体から養分を吸収して行われる点で,藻類と異なる。また,配偶体が生活史の主体を占め,胞子体は構造が単純で配偶体に寄生し,維管束を欠く点で維管束植物と異なる。最古の化石は上部デボン紀にさかのぼるが,その後の化石はわずかで古生物学的に進化の跡づけを行うことは困難である。…
…一般にシダ類といわれるものは真正シダ類fernで,シダ植物にはほかにマツバラン類psilotum,石松(せきしよう)類lycopod,トクサ類(有節類)horsetail(これらをひっくるめてfernalliesという)が含まれる。
[生活環]
種子をつくらない維管束植物はすべて,生活史のうちに,独立の生活を営む胞子体の世代(ふつうにみられるシダの体)と配偶体の世代(前葉体)をもち,それらが交互に現れる規則正しい世代交代を行っている。胞子が発芽すると配偶体になるが,シダ植物のうちの多くのものでは,心臓形をしてせいぜいmm単位の大きさの前葉体と呼ばれる構造をもっている。…
…胞子体上にできる無性生殖のための小さい単一の細胞で,発芽,生長して別個体になる。胞子は藻類,菌類では栄養細胞または単細胞性の胞子囊の中に,コケ植物,維管束植物では多細胞からできた胞子囊の中につくられる。…
※「胞子体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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