改訂新版 世界大百科事典 「カズラ」の意味・わかりやすい解説
カズラ (蔓/葛)
つる草の総称。ヒカゲノカズラ,テイカカズラ,スイカズラ,サネカズラなどはその例である。上代つる草を髪に結んだり,巻きつけたりして頭の飾りとし,これを鬘(かずら)といった。そのためつる草を〈かずら〉と称するようになったという。鬘は〈髪つら〉の略,〈髪つら〉の〈つら〉は〈つる〉の古名で,長く連なるので〈つら〉といったものらしい。ただし,のちにはつる草に限らず,ヤナギ,タチバナ,サクラ,ウメ,ユリ,ショウブ,ムラサキグサ,イネ,藻などの植物も鬘に用いられた。このように,草木のつるや茎や花などを取って髪飾りとすることを〈鬘く〉といい,もともと,植物の盛んな生命力を人間の体に取り入れようと願ったことから始まった。
地方により特定の植物,例えばテイカカズラ(岡山),クズ(香川)などを単に〈かずら〉と呼んでいる。また蔓水,蔓壺というと,それぞれサネカズラ(美男蔓)の粘液とそのつるを浸すに用いる壺のことである。
執筆者:深津 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報