改訂新版 世界大百科事典 「サネカズラ」の意味・わかりやすい解説
サネカズラ
scarlet kadsura
Kadsura japonica (L.) Dunal
地面を匍匐(ほふく)したり灌木におおいかぶさったりするマツブサ科の常緑のつる性木本。つるのからまる様から,〈さねかずら〉は“逢う”や“来る”の枕詞である。学名のKadsuraは日本語の葛(かずら)よりついた。古くは茎を煮て得た粘液を整髪に用いたので美男葛の別名がある。
夏に黄白色の小さな花を葉腋(ようえき)から出す。多くは単性花,時に両性花をつける。秋に多数の赤い果実が果托について丸い集合果を形成する。暖温帯,本州中部から台湾・朝鮮済州島・中国に分布する。痛み止めのために漢方で使う紅木香は,中国産の近縁種の長梗南五味子K.longipedunculataの根である。サネカズラ属には約22種があり,東アジアから東南アジア山地に分布している。
樹皮にキシログルクロニドを含む粘質物があり,水で抽出して整髪に用いたり製紙用糊に使ったりした。樹皮からは繊維をとる。常緑葉と赤い集合果との対比が美しいので,庭園や生垣によく栽植され,斑入りなどの園芸品種も育成されている。
執筆者:植田 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報