改訂新版 世界大百科事典 「スイカズラ」の意味・わかりやすい解説
スイカズラ (忍冬)
Japanese honeysuckle
Lonicera japonica Thunb.
山野に多いスイカズラ科のつる性低木。花冠の奥にみつがあり,吸うと甘いためこの名があり,また冬でも葉の一部が残るため忍冬(にんどう)ともいう。茎は長く伸びて他物に巻きつき,古い樹皮は縦に裂ける。葉は対生,楕円形で長さ3~7cm。花は2個ずつ対をなして,5~6月に咲く。花冠は長さ3~4cm,初め白色から淡い桃色で,後に黄色くなる。背腹性があり,上唇の先は4裂,下唇は細長い。果実は球形,秋に黒く熟す。日本,朝鮮,中国,台湾に自生し,北アメリカやヨーロッパでは観賞のために植えたものが野生化し,畑地の雑木となり嫌われている。葉を乾かしたものはタンニンを含み,茶の代用とされる。生薬では花を金銀花,茎および葉を忍冬という。花は脂肪酸,フラボノイドなどを含み,単独で,あるいは他の生薬と配合して,解熱,解毒薬として流行性感冒,おできなどに,また黒焼きは止血薬とする。忍冬はタンニン,サポニンおよびフラボノイドなどを含み,金銀花と同様に用いられるほかに利尿の効がある。忍冬または金銀花水は夏季,清涼飲料となる。また香りが強いこともあって忍冬酒ともする。
ツキヌキニンドウL.sempervirens L.(英名trumpet honeysuckle,coral honeysuckle)は明治中期に日本に渡来し,観賞用として植えられる北アメリカ原産のつる性低木。対生する葉の基部が互いに合着し,茎が葉を突き抜いているように見えるので,この名がある。
執筆者:福岡 誠行+新田 あや
スイカズラ科Caprifoliaceae
ニワトコ,サンゴジュ,ヤブデマリ,アベリア,タニウツギ,ヒョウタンボクなど花の美しいものが多く,それらは観賞のため庭木として植えられる。木本,まれに草本。葉は対生し,単葉まれに複葉で,托葉はない。花は合弁花冠で普通はみつ腺があり,合着や退化の結果,形態的に多様性に富む。花冠は放射相称から左右相称となり,著しい2唇形を示すもの(スイカズラ)まである。おしべは花の背腹性と関連して5本が4本となるものや,さらに2本が大きく長いものまである。子房は下位で,オミナエシ科のように発育不全心皮があったり(リンネソウ属など),スイカズラ属のように二つの子房がさまざまな程度に合着することもある。種子には胚乳がある。花序の形態は多様で,無限花序から有限花序,さらに頭状花序まである。18属約500種からなり,主として北半球の温帯に分布しているが,熱帯高地からも知られ,ニワトコ属とガマズミ属は南アメリカ,さらに前者はアフリカ北部やオーストラリア東部にも分布する。これら2属は,分布や形態が他のスイカズラ科と著しく異なり,それぞれ別科とする見解もある。その他のものはよくまとまっていて,オミナエシ科などと類縁がある。
→パルメット
執筆者:福岡 誠行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報