改訂新版 世界大百科事典 「カズンズ父子」の意味・わかりやすい解説
カズンズ父子 (カズンズふし)
イギリスの水彩画家父子。父アレクサンダーAlexander Cozens(1717ころ-86)はロシア生れといわれるが,1742年にはイギリスにおり,一時イタリアに滞在した後,46年にイギリスに戻って水彩風景画家として一家をなした。紙上に偶然につくられる色の染みを利用した作画法(ブロット・ドローイングblot drawing)を創案し,イギリス・ロマン派風景画の先駆となった。息子ジョン・ロバートJohn Robert Cozens(1752-99)はロンドン生れ。76-79年および82-83年の2回イタリアを訪れたときにアルプスの景観に目を開かされ,生涯にわたってスイスとイタリアの風景を描き続けた。作品はほとんどが,わずかな色数のみを用いた水彩画である。彼はこの技法により大気と距離感の表現に優れ,当時イギリスで好まれていた特定の場所と建築を記録する地誌的(トポグラフィカル)な風景画から,純粋な風景画への一歩を進めた。そのアルプス風景はJ.M.W.ターナーに感銘を与えた。
執筆者:鈴木 杜幾子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報