けい‐かん ‥クヮン【景観】
〘名〙
① (Landshaft landscape の
訳語)
植物学、
地理学用語で
風景を、主として植物相、
地形の観点から眺めた場合の認識像をいう。自然景観。
※日本植物景観(1905)〈
三好学〉「我邦国の植物景観を紹介せんことを希望す」
② 観賞する価値のある眺め。また、比喩的に、社会のある部面を眺め渡したとき見てとれる状況をいう。
※私小説の
系譜(1948)〈
中野好夫〉「
遺憾ながら紙屑小説や糠味噌小説の方が氾濫し、あたかも日本文学の
主流であるかの如き景観をさえ呈している」
※故郷忘じがたく候(1968)〈
司馬遼太郎〉「当時の南原城の景観を
史料に
もとづいて再現してくれた」
[語誌](1)日本の植物生態学・植物生理学の先駆者であった三好学(
一八六一‐一九三九)が訳語として
考案した
近代の日本語。他方、
ドイツ地理学の影響の下に、昭和初期には地理学の学術用語として、「
景観地理学」「自然景観」「文化景観」などの複合語が生まれていった。
(2)第二次世界大戦後は、建築学や造園学などでも
術語として定着し、
景観保全などに対する社会的関心の高まりを背景として日常語としても多用され、②のような使い方も生じている。
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デジタル大辞泉
「景観」の意味・読み・例文・類語
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けいかん【景観】
景観は,一般には,景観美という使い方に代表されるように,風景に近い意味あいをもった言葉として理解されている。しかしこの言葉は,地理学の中では地表の空間的まとまりを表現する場合にも用いられてきた。景観は,植物学者の三好学がドイツ語のラントシャフトLandschaftに与えた訳語であるが,ラントシャフトの概念そのものの中に,すでに視覚的意味と地域的意味の並立を認めることができる。これは,ラントシャフトが古くから地域という意味をもっていたのに対して,ルネサンスの時代に絵画的意味が付加され,それが人間の視覚に映る形態すなわち相観という意味に発展したことに由来する。
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景観
けいかん
landscape; Landschaft
一定範囲の地表空間,すなわち目に映じる景色,または風景をさす。一般に自然景観と人文景観とに分けられる。前者は水,地形,植生などを構成要素とし,後者は人間の経済的,文化的活動の営みによって形成されたものをいう。これらの構成要素を分析し,その結果を総合することによって,地表空間の特性を明らかにすることは,かつて地理学研究の一方法とされた。これが,20世紀初頭ドイツで盛んになった景観論である。また人文景観の形成過程では,原景観,歴史景観,化石景観 (地下に埋没した過去の景観) ,現景観と区別して呼ぶこともある。
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普及版 字通
「景観」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の景観の言及
【気候景観】より
…ある場所の気候環境を,直接あるいは間接的に反映している景観を総称していう。気候景観を内容から区別すると,自然景観的な気候景観と人文景観的な気候景観に分けることができる。…
【相観】より
…植物群落を外観的にとらえた様相。単なる景観ではなく,植物群落の形・構造を反映したもの。主として植物群落の優占種の生活形によって決められ,植物群落の分類にも用いられる。…
※「景観」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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