改訂新版 世界大百科事典 「カフカスアルバニア王国」の意味・わかりやすい解説
カフカス・アルバニア王国 (カフカスアルバニアおうこく)
カフカス南東部のダゲスタン南部と現ソ連領アゼルバイジャンにあった古代王国。主要住民アルバニア人の言語はカフカス諸語に属する。この地方の住民は前1千年紀末には,犂耕作,放牧,種々の工芸,岩壁画(コブスタン)などの文化を有し,前3~前2世紀には国家を形成して首都をカバラに置いた。前1世紀にはクル川に至ったポンペイウスのローマ軍と戦った。3~5世紀ころ封建的諸関係が形づくられたが,キリスト教が国教とされたのもこのころで,独立のアルバニア・カトリコス管区が設けられた。6世紀にササン朝の支配を受けるが,7世紀にはメフル朝ジャバンシール(在位638-670)の時代に独立を回復した。7~8世紀のアルメニア人モブセス・ダスフランツィの年代記が唯一まとまった文献史料であるが,アルバニア人自身が残したものには5~6世紀の建築物跡がある。8世紀にはカリフ領になってイスラム化が進み,残されたアルバニア人キリスト教社会はアルメニア化した。
執筆者:北川 誠一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報