カバラ(読み)かばら(英語表記)abbālāh ヘブライ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カバラ」の意味・わかりやすい解説

カバラ(ユダヤ教の神秘思想)
かばら
abbālāh ヘブライ語
Cabbala 英語

中世ユダヤ教の神秘思想。ユダヤ教における神秘主義的教説や慣行は、すでにタルムード(ユダヤ教の教典)にさかのぼり、バビロニアメソポタミア)で律法主義的ユダヤ教と並んで原初的には存在していたが、中世ヨーロッパにもたらされて大きな展開をみせたものについてカバラ(伝統・伝承の意)の語が用いられる。ドイツにおけるカバラは、祈祷(きとう)、献身瞑想(めいそう)、禁欲生活に励むことによって魂の高揚を得て、隠れた不可知の神のカボード(栄光)を幻に見るという神秘体験を強調する。一方、プロバンス(南フランス)、スペイン地方で発展したカバラでは、隠れた神は、その属性である10のセフィラー(知恵、慈悲、公正、美など)を通して把握されるもので、このセフィロート(複数)を駆使して宇宙の創造過程、構造、維持を論じ、神とその被造物の世界との調和と統一を思索した。スペインにおける神秘思想は1300年ごろ世に出た「ゾハール」(光輝の書)を生み、その後のユダヤ人神秘家の教科書となった。

[石川耕一郎]


カバラ(ギリシア)
かばら
Kaválla

ギリシア北部、マケドニア地方東部のカバラ県の県都。人口6万3293(2001)。エーゲ海北岸のカバラ湾に臨む。北部ギリシアではテッサロニキに次ぐ重要な港湾都市で、タバコ集散地古代ローマ時代にはネアポリスNeapolisとして知られた都市の後を継ぐもので、14世紀後半よりオスマン・トルコ帝国の支配下に入り、1813年スルタンより同市出身のエジプト太守ムハンマド・アリーに授封された。バルカン戦争中ブルガリアに占領され、1913年にギリシア領に回復。古いイスラム教徒地区やビザンティンの城郭が残る。

[真下とも子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カバラ」の意味・わかりやすい解説

カバラ
Kabbalah; Kabala

12~13世紀頃に形成されたユダヤ神秘主義および神智学の発展した形態をいい,さらに一般的には,古代にまでさかのぼるユダヤ教の一連の秘教的な教理をいう。カバラは語源からいって「受取られたもの」をさし,モーセ五書以外のユダヤ教の諸書および預言書を意味した。 12~13世紀にライン地方で始った敬虔主義的な運動のなかでは,父祖伝来の祈祷を解釈するために,各アルファベットに一定の数を当てて文章の数値を発見したり,頭文字の組合せによる造語を行うなどの方法が用いられた。こうした解釈技法は,また瞑想の技法としても体系化され,やがて南フランスからスペインにかけて広まって,最盛期を迎えた。ナハマニデスのモーセ五書注解はその代表作の一つとされる。そのなかでは,注釈の形を借りて,正統的ユダヤ教では触れられることのない無限なる神の隠れたる秘義が探求されている。こうした方向は,その後のユダヤ教思想の展開に大きな影響を及ぼし,18世紀にはハシディズムという形態をとって,東ヨーロッパのユダヤ人の多くに浸透した。

カバラ
Kavála

ギリシア北部,マケドニア地方東部の都市。セサロニキの東北東約 130km,エーゲ海のカバラ湾にのぞむ港湾都市で,古代にはネアポリス,ビサンチン時代にはクリストゥポリスとして知られた。 1387~1912年オスマン帝国領。その後ギリシア領となったが,エーゲ海への出口を求めたブルガリアによって 12~13年,16~18年,42~44年占領された。現在ギリシア北部のタバコ栽培地帯の主要積出港。市の東に広がる干拓地ではイネやメロンが栽培される。旧市街のそばにローマ時代の水道橋が残っているほか,ローマ時代やビザンチン時代の遺跡,美術品などが多数保存されている。人口5万 8576 (1991推計) 。

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