日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンムリゴカイ」の意味・わかりやすい解説
カンムリゴカイ
かんむりごかい / 冠沙蚕
環形動物門多毛綱定在目カンムリゴカイ科の種類の総称、またはそのなかの1種名。カンムリゴカイSabellaria cementariumは、相模(さがみ)湾以北からオホーツク海、北アメリカ太平洋岸に分布し、岩礁や貝殻に着生する。体長2~5.5センチメートルで、体は頭部、2胸節、3副胸節、32~45腹節と後端の付属物からなる。頭部の前縁にはそれぞれ形が異なる剛毛が環状に3列並んでいる。剛毛列の外側の基部には10~12対の舌状突起がある。また、頭部腹側の中央には多くの糸状感触手が10~19横列に密生している。副胸節の背足枝は扁平(へんぺい)な方形で、7~13本の橈(かい)状剛毛をもっている。各節には指状のえらがあり、とくに第10~16環節間ではよく発達する。体後端の付属体は円筒状で腹側に湾曲する。粗い砂粒を集めて管をつくり、その中で生活する。日本にはこの種のほかに、本州中部以南に分布し、体長2~6センチメートルで、腹部のえらが大きく発達するハナカンムリLygdamis giardiや、本州中部以南に分布し、体長3~6センチメートルで、肛環節(こうかんせつ)付属体が著しく長く、体長の約半分を占めるナガオカンムリIdanthyrsus pennatusなどがいる。
[今島 実]