精選版 日本国語大辞典 「かい」の意味・読み・例文・類語
かい かひ【貝・介カイ】
〘名〙
① 体に石灰質の殻を持つ軟体動物の俗称で、その殻もいう。巻き貝、二枚貝、角貝などを含む。学問的には殻を持たないイカ、タコ、ナメクジなどを含めた軟体動物全体をさす。また、軟体動物以外でもホオズキガイやフジツボなどのような石灰質の殻を持つものを含めていうこともある。現在までに知られている軟体動物は世界で約八万種あり、日本には約七〇〇〇種産する。陸、淡水、海水にすむが、海産が最も多く、特に熱帯地方に多い。水産物として重要なものが数十種をこえる。
※万葉(8C後)一五・三七〇九「家づとに可比(カヒ)を拾(ひり)ふと沖辺より寄せ来る波に衣手濡れぬ」
③ 貝で作ったさかずき。
※幸若・鎌田(室町末‐近世初)「張台へつつといりかいを一つ取出し、〈略〉ただうちとけておあそびあれ」
④ (「かいこう(貝香)」の略) ある種の巻き貝のふたの一部を粉にして、練り香の材料としたもの。
※後伏見院宸翰薫物方(1336頃)「凡貝はくさしといへども、是をくはへずは、其かものにそまざるなり」
⑤ 「かいあわせ(貝合)」の略。
※実隆公記‐文明八年(1476)三月一二日「今日於二御前一有二御貝一」
⑥ 青貝。螺鈿(らでん)。
※名語記(1275)四「甲虫をかいとなつく如何。かいは螺也。貝也。からいりの反、柄入也」
⑦ 紋所の名。冑貝、違貝(ちがいがい)などの種類がある。
⑧ (形が似ているところから) 女性の性器をいう。
※浄瑠璃・日蓮聖人御法海(1751)四「惣体女(おなご)はかいを所持してゐるによって」
⑨ (接尾語のように用いて)
(イ) 貝殻入りの膏薬などを数えることば。
※蔭凉軒日録‐長享二年(1488)一一月八日「白小袖一領・蘇合円一貝・龍虎丹一貝・贈二後板寮一」
(ロ) (薫き物を二枚貝に入れて贈答したところから) 薫き物を数えることば。
※御湯殿上日記‐文明一二年(1480)二月八日「きう上らふよりたき物三かい二まいる」
か‐い
※洒落本・郭中奇譚(1769)掃臭夜話「わりゃ銭があるかイ」
② 反語を表わす。
※金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉前「見棄てないものが嫁に帰(ゆ)くかい」
③ 強く相手を促す意を表わす。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「庄兵衛どん一寸(ちょと)橋詰まで出てもらをかいトいふとの」
かい かひ【匙・匕・
】
〘名〙 (古く貝殻を用いていたところからという)
① 食物をすくうもの。さじ。しゃくし。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※枕(10C終)二〇一「御膳まゐるほどにや、箸、かひなど、とりまぜて鳴りたる、をかし」
② (①に「木刀」の字をあてたところから) 木刀、刀のことをいうか。
※今昔(1120頃か)二六「此武者なる者、合聟が髻(もとどり)を取て打臥(うちふせ)て、前に差たる一(ひと)匕(かひ)を抜むとするに」
かい
〘名〙 (戒具の「戒」か、あるいは、同型の二個がつながっていることから「貝」を連想したものか) 手錠をいう、盗人仲間の隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
※いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉二「カイ(手錠)をはめられて、俺は自動車に乗せられた」
かい
〘副〙 体言、動詞にかかって、時間、距離の短いさま、労力の少ないさまなどを表わす。つい。ちょっと。
※浮世草子・新色五巻書(1698)二「山二つ三つ越ての恋はあんまり腹も立まい。今日の首尾程よい事なし。かいつい物言ふ内に埒明くる事よ」
かい
〘名〙 桶(おけ)。
※物類称呼(1775)四「桶 をけ〈略〉豊州及肥前佐賀にて、かいといふ」
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