改訂新版 世界大百科事典 「ガルアノニム」の意味・わかりやすい解説
ガル・アノニム
Gall Anonim
現存する最古の《ポーランド年代記》(1112-16)の著者。11世紀後半から12世紀前半の人。生没年不詳。その経歴については史料が何も残っておらず,名前すら不明なままである。〈ガル・アノニム〉は便宜上,16世紀に使われた〈無名のフランス人〉を意味するラテン語〈ガルス・アノニムス〉をポーランド風に呼びかえたものである。ただし《年代記》の内容から,プロバンス地方にあったベネディクト派のサン・ジル修道院の修道士であったと推測されている。ハンガリーにつくられたばかりの娘修道院に滞在中,巡礼にやってきたボレスワフ3世曲唇王の一行といっしょになってポーランドにやってきたと考えられている。《年代記》は曲唇王の偉業のみならず,それ以前の2人のボレスワフ,つまりボレスワフ1世勇敢王とボレスワフ2世豪気侯の偉業もたたえる目的で書かれており,18世紀後半までこの時期のことを知るための唯一の史料とされていた。
執筆者:宮島 直機
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報