キタトックリクジラ(その他表記)Hyperoodon ampullatus; northern bottlenose whale

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キタトックリクジラ」の意味・わかりやすい解説

キタトックリクジラ
Hyperoodon ampullatus; northern bottlenose whale

クジラ目ハクジラ亜目アカボウクジラ科トックリクジラ属。体長は雄約 9.8m,雌約 8.7mに達する。出生体長は 3.5m程度。体色は背部と胴部が黒褐色または黒に近い灰色で,腹部は白っぽい灰色である。胸鰭 (むなびれ) と尾鰭は胴部よりも濃い色を呈する。幼鯨は成鯨に比べ茶色がかっている。噴気孔は1個で頭部正中線上に位置する。前頭部が丸くふくらみ張出しており,雄は年齢とともにふくらみを増す。嘴 (くちばし) は短く太い。咽喉部にハの字状の溝が2~4本ある。背鰭は小さく,体の後方3分の2に位置し,三角形状で先端はとがり後縁は鎌状である。歯は下顎先端に1対あるのみ。普通,群れは4~10頭であるが,まれに 20頭以上をなすことがあり,群れの団結は強い。潜水時間は通常約1時間であるが,最長2時間をこえると考えられている。繁殖期は4月。おもにイカ類を捕食し,魚類ナマコ,エビ等の底生動物も食べる。分布は北大西洋でのみ確認される。大陸棚斜面などの深海部に生息する。鯨油の採取を目的としておもにノルウェーで捕獲されてきたが,1973年以降は捕獲されていない。

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