改訂新版 世界大百科事典 「クリプトモナス」の意味・わかりやすい解説
クリプトモナス
Cryptomonas
植物としては褐色ないし紅褐色の遊泳性のクリプト藻綱クリプトモナス目クリプトモナス科の1属で,淡水にも海にも生育する。細胞は倒卵形に近い形状であるが,前端の一方の肩に相当する部分がへこみ,その底部から少し長さの異なる鞭毛が2本のびる。鞭毛は長いものは羽型構造であるのに対し,短いものは片羽型構造である。細胞内には1個の核と1個の膜状の色素体をもち,色素体にはクロロフィルaとbのほかに,紅藻やラン(藍)藻がもつフィコビリン色素を含み,光合成によりデンプンを生成する。鞭毛と光合成にこのような特徴をもつ植物は,クリプト植物Cryptophytaのクリプト藻綱(または褐色鞭毛藻綱)Cryptophyceaeとして分類される。クリプト藻綱にはこの属のほかに,クロオモナス属Chroomonas,ヘミセルミス属Hemiselmis,ロドモナス属Rhodomonasなどがある。
なお,これは動物としても分類され,原生動物門有毛根足虫亜門鞭毛虫上綱植物性鞭毛虫綱の1目に含められる。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報