日本大百科全書(ニッポニカ) 「クンケル」の意味・わかりやすい解説
クンケル
くんける
Johann Kunckel
(1630/1638―1702/1703)
ドイツの錬金術師、化学技術者。錬金術師の父から化学を学び、ザクセン選挙侯Johann Georg Ⅱ, Elector of Saxony(1613―1680)やブランデンブルク選挙侯フリードリヒ・ウィルヘルムの宮廷に錬金術師あるいは薬剤師、ガラス工場監督として仕え、最後はスウェーデン王カール11世Karl Ⅺ(1655―1697、在位1660~1697)に鉱山大臣として仕えた。金属変換の可能性を信じて疑わなかったが、その著作は実験事実を率直に書いたもので神秘的なものではなかった。とくに1676年、ブラントHenning Brand(1630―1710)やボイルとは独立にリンの製法をみいだしたことは有名である。また、ネリAntonio Neri(1576―1614)のガラス技術書に自らの研究を加えて1679年に著した『ガラス製造術』Ars Vitraria Experimentalisは18世紀末まで最良の書といわれ、フリードリヒの産業振興政策に寄与したものと思われる。
[内田正夫 2022年9月21日]