改訂新版 世界大百科事典 の解説
ケーシャブ・チャンドラ・セーン
Keshab Chandra Sen
生没年:1838-84
近代インドの宗教改革家。ラーム・モーハン・ローイが1828年に創設したブラフマ・サマージに入り(1857),数々の思い切った改革を推進した。カースト差別の全廃を訴え,キリスト教的な考え方を導入しながら,ヒンドゥー教とイスラムをも包みこんだ世界的な一大宗教教会を設立しようとした。世界各地の宗教聖典からの引用で祈禱の書を編み,サティーを廃して寡婦再婚を認め,幼児婚,一夫多妻制などに反対し,さまざまな学校を設立した。やがて,彼のキリスト教志向が強まるにつれ,ヒンドゥー教的な伝統を重視するデーベーンドラナート・タゴールなどから不満が噴出,ついに同協会は分裂するにいたった。その後,彼は《ナバ・ビダーナNava Vidhāna(神の新しい啓示)》を公表,キリスト教的な儀礼を中心にした一大宗教の確立を図ったが,死後,後継指導者にめぐまれず,挫折した。
執筆者:宮元 啓一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報