日本大百科全書(ニッポニカ) 「サムロンセン貝塚」の意味・わかりやすい解説
サムロンセン貝塚
さむろんせんかいづか
Somrong-Sen
東南アジアの代表的な貝塚遺跡。カンボジア中央に位置する大湖トンレ・サップから流下するトンレ・サップ川支流右岸に位置する。1876年にフランスのムーラの採集した遺物がヌーレによって報告され、世に知られた。のちにインドシナ地質調査所のマンシュイらが発掘調査を行った。貝塚はシジミ、タニシなどの淡水産の貝類からなり、南北350メートル、東西200メートル、高さ5メートルの小丘をなしている。出土遺物は壺(つぼ)、鉢、皿など形の変化に富み、種々の幾何学文で飾られた土器類、磨製の石斧(せきふ)、石鑿(いしのみ)、石製・貝製の装飾品、青銅製の斧(おの)、鏃(やじり)、鐘(しょう)、釣り針などである。この遺跡は一般に金石併用期に形成されたものとされるが、石器時代から青銅器時代にわたって長く営まれた可能性も考えられる。
[今村啓爾]