改訂新版 世界大百科事典 の解説
ザンクト・ゴットハルト・トンネル
Sankt-Gotthard-Strassentunnel
スイスとイタリアの国境近くにあるザンクト・ゴットハルト峠を貫く道路トンネル。標高約2100mのザンクト・ゴットハルト峠は冬季6ヵ月にわたって使用不能となる交通の難所であり,これまでは1882年に完成した鉄道トンネルを利用し,自動車を貨車に積み込んで輸送していた。しかし,増大する交通量に対応しきれなくなったため,新たに建設されたのがザンクト・ゴットハルト・トンネル(サン・ゴタール・トンネル)で,1969年に着工,80年9月に完成した。延長16.284km,幅員7.8m,換気は横流式。事業費は約930億円で通行料は不要である。長大トンネルを供用するに際しての課題の第1は火災時の安全対策であるが,このトンネルでは,(1)危険物積載車両の通行禁止,(2)避難方式の充実(250mごとの60名収容避難場所と本線に並行する避難坑および特殊車両の常備,750mごとの車両方向転換所の設置など)の対策を施した。なお,長大道路トンネルとしては,このほかにスイス,オーストリア国境のアールベルク・トンネル(約14km,1978完成),モン・ブランの山腹を貫いてイタリアとフランスとを結ぶモン・ブラン・トンネル(約11.6km,1965完成)などがあり,日本では恵那山トンネル(8.6km)などがある。
執筆者:河村 忠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報