日本大百科全書(ニッポニカ) 「ショウゲンジ」の意味・わかりやすい解説
ショウゲンジ
しょうげんじ / 性賢寺
[学] Rozites caperata (Fr.) Karst.
担子菌類、マツタケ目フウセンタケ科の食用キノコ。高さ7~15センチメートル。傘は初め鐘形でやがて平らに開き、径5~10センチメートル余りになる。表面は黄土色で、放射状に走る浅いしわを帯びる。肉は白。ひだは茎にやや湾生し、初め白いが、胞子が熟すとさび色になる。茎は太さ1~2センチメートルの円柱状で、肉は締まる。中ほどよりすこし上にやや落ちやすいつばがあり、根元には薄い膜質のつぼが密着するが、つぼはしばしば不明瞭(ふめいりょう)である。マツその他の針葉樹林に多く、分布は日本のほか、ヨーロッパ、北アメリカなどにまたがる。ショウゲンジの名は、岐阜県または長野県伊那(いな)地方にあった寺の名に由来するといわれる。江戸時代のキノコ図譜である市岡知寛著の『信陽菌譜』(1799)には「寺の僧がこの茸(きのこ)を食べて土地の人に教えた」とあり、ボウズタケ、ボウサンタケなどの地方名はいまも残っている。のち、坂本浩然(こうねん)著による『菌譜』(1835)のなかに「性賢寺」の名が出ており、菌学者川村清一(せいいち)がこれを正式和名として採用した。
[今関六也]