改訂新版 世界大百科事典 「スカピリアトゥーラ派」の意味・わかりやすい解説
スカピリアトゥーラ派 (スカピリアトゥーラは)
Scapigliatura
イタリアで1860年代から80年代にかけて,王制による新国家体制に幻滅を感じた若い共和主義的作家たちによって,ミラノを中心に展開された前衛文学運動。蓬髪派とも訳される。彼らは既成の価値観を否定し,芸術至上主義を唱え,ボヘミアン的生活を送ったため,スカピリアトゥーラ(〈奇矯なふるまいの人々〉の意)と呼ばれた。彼らは当時支配的だった科学実証主義に反発しながら,ロマン主義文学の超克を目ざした。そこで一方では社会的不正義を糾弾するリアルな作品を書きながら,もう一方ではボードレール,ネルバル,ポーらの影響のもとに,イタリアのロマン主義文学が見過ごしてきた悲惨なもの,怪奇なものへ文学的探究を進めていった。会話体を大胆に取り入れた絵画的詩を書いたプラーガや,幻想的な詩風のボーイト,幻想的小説を多く残したタルケッティIgino Ugo Tarchetti,特異な言語実験をしたドッシCarlo Dossiらがその代表的作家である。多様な傾向を示した同派の文学は,この後に興る自然主義文学,デカダンス文学,さらには未来派の文学運動にまで影響を与えた。
執筆者:竹山 博英
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