セクレチン-グルカゴンファミリー

内科学 第10版 の解説

セクレチン - グルカゴンファミリー(消化管ホルモン)

(2)セクレチン-グルカゴンファミリー
a.セクレチン
 セクレチン(secretin)は十二指腸・上部小腸のS細胞で産生される.おもに十二指腸内腔のpH低下により分泌され,膵管上皮細胞からの水や炭酸水素分泌を促進し,十二指腸内腔を中和すると同時にソマトスタチン分泌を促進し,胃酸分泌を抑制する.セクレチン負荷試験は慢性膵炎などの膵外分泌機能の評価に用いられてきた.ガストリノーマではセクレチン負荷によりガストリンが上昇する.
b.グルカゴン,GLP-1,GLP-2,グリセンチン,オキシントモジュリン
 いずれもグルカゴン遺伝子から,膵島A細胞ではグルカゴン(glucagon),回腸や大腸など下部消化管L細胞では,GLP-1(glucagon-like peptide-1),GLP-2(glucagon-like peptide-2),グリセンチン(glicentin),オキシントモジュリン(oxyntomodulin:OXM)が産生・分泌される.グルカゴンは,膵臓ではインスリン分泌を促進するが,肝臓ではグリコーゲン,脂肪組織では脂肪の分解を促進し,糖新生により血糖を上昇させる.また消化管運動抑制作用があり,上部消化管内視鏡の前処置として用いられる.GLP-1はインスリン分泌促進をもち,GIP(gastric inhibitory polypeptide,glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とともにインクレチンとよばれる.【⇨12-16】
c.血管作動性腸管ペプチド,下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド
血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide:VIP),下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(pituitary adenylate cyclase activating polypeptide:PACAP)は,胃や膵臓などの腸管神経叢に発現する神経ペプチドであり,膵外分泌を促進する.そのほかにVIPは腸管や血管の平滑筋弛緩作用,PACAPは胃酸分泌の神経性調節作用をもつ.VIP産生腫瘍(VIPoma)は,1日数Lにも及ぶ水様性下痢などを主徴とするWDHA(watery diarrhea,hypokalemia and achlorhydria)症候群をきたす.【⇨8-9-9)】[蔡 明倫・乾 明夫]
■文献
Chen CY, Asakawa A, et al: Ghrelin gene products and the regulation of food intake and gut motility. Pharmacol Rev, 61: 430-481, 2009.
Kamiji MM, Inui A: Neuropeptide y receptor selective ligands in the treatment of obesity. Endocr Rev, 28: 664-684, 2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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