十二指腸粘膜から分泌されるペプチドホルモンで、1902年にベイリスW. M. Bayliss(1860―1924)とE・H・スターリングによって抽出された。スターリングはセクレチンのように特定の細胞から分泌され血流によって運ばれ、離れた場所にある他の器官に作用する化学的情報伝達物質を総称してホルモンhormoneとよぶことを初めて提唱した。セクレチンは27個のアミノ酸からなるペプチドで、十二指腸のS細胞(特徴抽出細胞)でつくられ、膵液(すいえき)の分泌を促進する。胃の内容物が十二指腸に送られると、胃液中の酸およびタンパク質や脂質の消化産物によって十二指腸粘膜が刺激され、セクレチンが分泌される。セクレチンは血液中に入り、膵臓に達して膵導管細胞および胆道からの膵液の分泌を促す。重炭酸塩に富んだ膵液によって十二指腸内はアルカリ性となり、胃の幽門が閉じ、胃の内容物が一度に移行してこないようにしている。腸内の消化が完了すると、ふたたび幽門が開き、新たに胃の内容物がやってくるというサイクルをつくっている。1981年(昭和56)湧永(わくなが)薬品(現、湧永製薬)の遺伝子工学グループは、セクレチンのアミノ酸配列から遺伝子の構造を推定、DNAの化学合成を行って遺伝子を人工的に合成したのち、大腸菌に導入して、大腸菌にセクレチンをつくらせることに成功した。
[菊池韶彦・小泉惠子]
十二指腸粘膜内のセクレチン分泌細胞(S細胞)から分泌される消化管ホルモンで,27個のアミノ酸からなるポリペプチド。胃液で酸性になった胃の内容物が十二指腸に送りこまれると,セクレチンが分泌されて膵臓に作用し,膵液(とくにその水分と重炭酸塩)の分泌を促進するが,これにより胃酸が中和され,十二指腸内容物がアルカリ性に傾くと,セクレチンの分泌は停止する。このようにして膵液分泌を調節するほか,胃における塩酸分泌を抑制するなどの作用のあることも知られている。
執筆者:屋嘉比 康治
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C130H220N44O41(3055.45).十二指腸の上皮細胞で合成されるペプチドホルモンで,27アミノ酸残基よりなる.十二指腸内が酸性のときに血中に分泌され,膵臓に作用して,炭酸水素イオンの分泌を促す.胃液の中和を監視しているホルモンといえる.名前以外は似ても似つかないセレクチンとまぎらわしいので間違えないように注意.[CAS 17034-35-4]
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…また消化管ホルモンも消化管運動の調節にあずかる。たとえば,ガストリンは胃運動の促進,幽門括約部の弛緩,食道下部括約部の収縮,小腸運動と胆囊収縮の促進をひき起こし,セクレチンは食道下部括約部,胃,小腸の運動を抑制する。 消化管運動には大別して,蠕動(ぜんどう)と分節運動の二つの型式がある。…
…胃内の食物はこの酸性の状態で働くペプシンというタンパク質分解酵素によりある程度消化される。胃の内容物が酸性のまま十二指腸内に入ると,十二指腸粘膜からセクレチン,コレシストキニン‐パンクレオチミンという消化管ホルモンが血液中に放出され,循環して膵臓に至り,膵液の分泌を促す。セクレチンは膵臓の導管系細胞から水と炭酸水素ナトリウムを分泌させ,コレシストキニン‐パンクレオチミンは腺房細胞に働いて,消化酵素の合成・分泌をたかめる。…
…ホルモンは生体内にまったく新しい反応系や現象をひき起こすものではなく,すでにあるものを刺激したり,抑制するものである。なお,〈ホルモン〉の語は,セクレチンを発見したスターリングE.H.Starlingが,1905年に命名したもので,〈刺激するもの〉の意味である。無脊椎動物のホルモンについては,甲殻類のほか昆虫で詳しく研究されているが,これについては〈昆虫ホルモン〉の項目を参照されたい。…
※「セクレチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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