インクレチン(読み)いんくれちん(英語表記)incretin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インクレチン」の意味・わかりやすい解説

インクレチン
いんくれちん
incretin

食物摂取後の血糖値上昇に応じて腸管から分泌され、インスリン分泌を促進させるように働く消化管ホルモンの総称十二指腸から塩酸に反応して分泌されて膵(すい)外分泌を促す消化管ホルモンにセクレチンがあり、これに対して、膵内分泌を促す消化管ホルモンという意味合いからこの名がつけられた。GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)がその代表的なもので、膵臓のβ(ベータ)細胞からのインスリン分泌を促進させる。食物を摂取していないときはインスリン分泌を促すようには働かず、食物の栄養分が消化管から吸収され血糖値が上昇すると、分泌が促されて血糖値を下げるように働く。ほかに、膵臓のα(アルファ)細胞から分泌されて血糖値を上昇させるように働くグルカゴン放出を抑制する作用もある。

 糖尿病の治療薬として、こうしたインクレチンの作用を増強させるGLP-1受容体作動薬などの薬剤が開発されている。また、インクレチンは血中で酵素(DPP-4)によって分解されるため、この酵素の働きを抑えることでインクレチンの作用を強めるDPP-4阻害薬も開発され、2型糖尿病のグルカゴン放出抑制の目的などに用いられている。

[編集部 2023年11月17日]

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