内科学 第10版 「セトロニン」の解説
セトロニン(消化管ホルモン)
セロトニン(serotonin,5-hydroxy-tryptamine:5-HT)は,生理活性アミンであり,全身に分布する5-HTの90%は胃から大腸のEC細胞で産生され,消化管内腔の機械的刺激により分泌される.5-HT受容体は7つのファミリー(5-HT1~7),14のサブタイプが知られている.消化管運動は粘膜固有層の知覚神経線維の5-HT受容体を介して調節される.抗腫瘍薬のシスプラチンは5-HT分泌を促進し,消化管運動抑制,摂食抑制と同時に,知覚神経線維終末あるいは延髄の5-HT3受容体を介して嘔吐を引き起こす.5-HT3受容体拮抗薬は,抗腫瘍薬による悪心・嘔吐や過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS),5-HT4作動薬は胃排出促進,胃の適応性弛緩を改善し,機能性ディスペプシアや糖尿病性胃麻痺にも用いられる. 上記以外にも,消化管ホルモンとして重要なソマトスタチン,ガストリン放出ホルモン(gastrin releasing peptide:GRP),カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP),ガラニン,レプチン,アミリンを表8-1-5にまとめた.[蔡 明倫・乾 明夫]
■文献
Chen CY, Asakawa A, et al: Ghrelin gene products and the regulation of food intake and gut motility. Pharmacol Rev, 61: 430-481, 2009.
Kamiji MM, Inui A: Neuropeptide y receptor selective ligands in the treatment of obesity. Endocr Rev, 28: 664-684, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報