精選版 日本国語大辞典 「大腸」の意味・読み・例文・類語
だい‐ちょう ‥チャウ【大腸】
おお‐わた おほ‥【大腸】
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消化管のうち小腸に続く部分で、小腸よりも太くて短い。ヒトにおける長さは約150~160センチメートルである。大腸は盲腸、結腸、直腸の3部に区別される。
[嶋井和世]
盲腸は回腸が大腸に開く部分で、その位置は右腸骨窩(か)にあって、長さ約5~6センチメートルのほぼ球嚢(きゅうのう)状で、盲端になっていることからこの名前がある。盲腸の下端は鼠径靭帯(そけいじんたい)の中央部にくる。ヒトでは盲腸の発育は弱い。回腸から盲腸に開くところ(回盲口)には回盲弁(結腸弁)がある。これは回盲末端が盲腸に突出してヒダ(襞)状になったもので、大腸の内容物の逆流を防ぐ働きがある。盲腸の内後側壁から長さ約6~8センチメートル、直径0.5~1センチメートルの細い盲管、すなわち虫垂(虫様突起)が出ている。虫垂の腹壁に対する位置は、右の上前腸骨棘(きょく)とへそ(臍)を結ぶ線上で、右寄りほぼ3分の1(3~5センチメートル)の腹壁点に相当している。この点をアメリカの外科医マクバーネーC. MacBurney(1845―1913)にちなんでマクバーネー点MacBurney's pointといい、虫垂炎の際の圧痛点となっている。しかし、盲腸は移動しやすいため、虫垂の位置も個人差が著しい。盲腸の存在は爬虫(はちゅう)類からであるが、虫垂が明瞭(めいりょう)に存在するのはヒトや類人猿だけである。
[嶋井和世]
結腸は盲腸に続く部位で、上行結腸(長さ約15センチメートル)、横行結腸(長さ約40~50センチメートル)、下行結腸(長さ約25~30センチメートル)、S状結腸(長さ約40センチメートル)を区分する。
(1)上行結腸 盲腸の上端から始まり、右後腹壁で右腎臓(じんぞう)の前側を上行し、肝臓右葉の下面まできてほぼ直角に左方に屈曲して、横行結腸に移る。上行結腸は前面と両側面だけが腹膜に覆われており、腸間膜はない。つまり上行結腸の後面は後腹壁に固着されていて、移動はしない。
(2)横行結腸 やや左上がりに左方へ向かって十二指腸の前面を走る。横行結腸は腸間膜に包まれて、後腹壁から長く吊(つ)り下げられた状態となるため、可動性が大きい。内容物が充満しているときは下腹部や骨盤まで下垂する。横行結腸の上前面部は、右方で肝臓、胆嚢(たんのう)が接触するが、他の大部分は胃の大彎(だいわん)と脾臓(ひぞう)が接している。横行結腸の前壁は、胃から下降する大網によって前腹壁と隔てられている。
(3)下行結腸・S状結腸 下行結腸は左後腹壁で、脾臓の下端、左腎臓の前面から始まり、左腸骨窩まで下がり、S状結腸に続く。下行結腸も前面だけが腹膜に覆われている。S状結腸の始まりは明瞭ではないが、左大腰筋の前方にあり、S字状に彎曲して仙骨の岬角(こうかく)の左側から直腸に移る。S状結腸も腸間膜が長く、可動性が大きい。老年男子ではこの間膜がねじれて腸捻転(ねんてん)をおこしやすい。
[嶋井和世]
直腸は長さ約20センチメートルで、ほぼ仙骨の前面正中線を下行し、肛門(こうもん)に続く。直腸の下端は直腸膨大部とよび、内容物が充満すると膨らむ。直腸の下端には静脈叢(そう)が発達しているが、これが痔(じ)の原因となりやすい。
結腸の表面には、肉眼的にも認められる3条の隆起線がほぼ等間隔で走っている。これは結腸の外縦走筋が集束してできたもので、結腸ヒモ(紐)とよび、虫垂の部分から始まり、直腸の移行部までみられる。1条は前壁を走る大網ヒモで、大網と結合している。1条は後壁にある間膜ヒモで、結腸間膜の付着部分にある。両者の中間にあるのがもう1条の自由ヒモで、これは独立して走っている。これら結腸ヒモの有無は小腸との区別に役だつ。大腸の内面を覆う粘膜上皮細胞は、小腸と異なり、絨毛(じゅうもう)がない。粘液を分泌する杯(さかずき)細胞が大腸の下部粘膜ほど多くなるのは、内容物の輸送を滑らかにするためと思われる。大腸の粘膜組織内にある多数のリンパ節は孤立リンパ小節である。
[嶋井和世]
大腸の運動には、膨起往復運動、分節運動、多膨起推進運動、蠕動(ぜんどう)運動の4種類があるが、本質的には小腸と同じく、蠕動運動(輪走筋が収縮して、その内容物を移送する運動)と分節運動(とびとびに強いくびれが生ずる運動)である。小腸から内容物が盲腸に送られてくると、上行結腸に逆蠕動がおこり、盲腸のほうに移っていく。このほか、上行結腸では、回盲部からおこる蠕動もみられるため、内容物の移動は遅くなり、水その他の物質の吸収や消化が行われる。一方、横行結腸以下の蠕動は通常は少ないが、食事をとると、胃‐大腸反射によって、とくに強い蠕動がおこる。この蠕動は下行結腸とS状結腸に著しくみられるもので、これによって内容物は直腸にまで運ばれ、排便と深くかかわっている。下行結腸、S状結腸の段階では、内容物の固形化が主体となっている。なお、大腸は自律神経系によって支配され、副交感神経は腸管運動や分泌の促進に働き、交感神経はその抑制をつかさどる。
大腸粘膜に分布する腺(せん)からは粘性に富む分泌液が出るが、消化酵素をほとんど含まないため、消化には直接関与はしないが、大腸の壁を内容物移送による障害から保護するという役をもっている。また、大腸内には腸内細菌として大腸菌など100種類以上の細菌が常在している。これらの細菌は線維の分解などを行うわけであるが、その数は糞便(ふんべん)1グラム当り数千億個ともいわれ、容積にすると糞便のほぼ3分の1を占めているという。このほか、大腸では糖質の発酵、タンパク質の分解などによって腸内ガスができる。
大腸壁の神経叢が先天的に欠如しているものをヒルシュスプルング病、または先天性巨大結腸といい、小児にみられる先天性疾患である。これは結腸の一部が狭くなり、その上方が大きく膨れる疾患であるため、手術して治療するよりほかに方法がない。大腸内に異常にガスがたまる状態を鼓腸(こちょう)という。軽いものでは便秘が強いときにみられるが、腸閉塞(へいそく)や腸麻痺(まひ)によっておこることもある。大腸運動が盛んになったり低下しておこるのが、下痢と便秘である。ひどい下痢になると体力の消耗をきたし、小児では死亡することもあるので注意を要する。
[市河三太]
『中野昭一編著『図解生理学』第2版(2000・医学書院)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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…昆虫などでは腸は前腸,中腸,後腸に区分され,中腸腺やマルピーギ管(排出器)などの付属器官をもつなど複雑化している。脊椎動物の腸は,発生的に中腸と終腸にそれぞれ由来する小腸と大腸よりなり,両者の境界に盲腸が分岐する。魚類では小腸と大腸の区別が明らかではない。…
※「大腸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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