ゾステロフィルム(その他表記)Zosterophyllum

改訂新版 世界大百科事典 「ゾステロフィルム」の意味・わかりやすい解説

ゾステロフィルム
Zosterophyllum

おそらく古生マツバラン綱に属すると考えられている最古の陸上植物の一つ。ドイツの中部デボン系ベルギーの下部デボン系,オーストラリアのデボン系などから発見され,最近では中国の下部デボン系からも発見された。

 植物体は小型で葉がなく,Y字形に何回も分枝する細い茎からなり,高さは10cmほどになる。茎には明らかに維管束があるが,その大部分は浅い水底に沈み,茎の先端から穂状の胞子囊穂ほうしのうすい)を水面上に出していたものと推定されている。胞子囊穂は大きいもので長さ5cm,径4~6mmの筒形長柄がある。胞子囊は軸のまわりにらせん状に配列し,約40~50個を数える。胞子囊は厚壁でかなり大きい。

 zosteroは帯,phyllumは植物を指す。日本からは発見されていないが,将来発見される可能性は大きい。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のゾステロフィルムの言及

【小葉植物】より

…シダ植物(無種子維管束植物)のうち,小葉性の葉をもった植物群で,現生にはヒカゲノカズラ属,イワヒバ属,ミズニラ属など5属があり,古生代に繁茂した鱗木(りんぼく)や蘆木(ろぼく)なども含まれる。最近の研究によれば,主軸が単軸分岐をし,軸生の胞子囊をつけ,小葉をもった植物は,裸茎植物の一群であるゾステロフィルム群から由来したものであり,この系統の植物群は大葉性の葉をもった他の維管束植物と異なった起源のものであることが示されている。枝条から由来する大葉と,軸表面の隆起から発展してきた小葉とは起源が異なり,同じような機能をもった葉であってもお互いに相同な器官とはいえない。…

【裸茎植物】より

…現生種はマツバラン属とイヌナンカクラン属の2属に分類され,それぞれ独立の科として扱われるが,化石は知られておらず,デボン紀に滅んでしまった古生マツバラン類とは直接の系統関係はないとみなされている。古生マツバラン類は,葉も根もない一つの系統群と考えられていたが,茎の表面に付属物をつけず,茎が二叉(にさ)分枝し,胞子囊を頂生するライニア群,茎の表面に付属物をまれにつけ,茎は三叉以上に分枝することがあり,胞子囊は頂生するがしばしば反曲するトリメロフィトン群,茎の表面に葉的付属物をつけ,茎は単軸分岐し,胞子囊は軸生のゾステロフィルム群の3群に分かれることが明らかとなっている。現生種は,ウラジロ科近縁のシダ類であるとする説や,小葉植物と類縁があるとする説などもある。…

※「ゾステロフィルム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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