胞子嚢(読み)ホウシノウ

デジタル大辞泉 「胞子嚢」の意味・読み・例文・類語

ほうし‐のう〔ハウシナウ〕【胞子×嚢】

胞子内部に生じる袋状の生殖器官。成熟すると破れて胞子を散布する。シダ植物の葉の裏面コケ植物さくにみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「胞子嚢」の意味・読み・例文・類語

ほうし‐のうハウシナウ【胞子嚢】

  1. 〘 名詞 〙 胞子を形成する嚢状の生殖器官。芽胞嚢。

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改訂新版 世界大百科事典 「胞子嚢」の意味・わかりやすい解説

胞子囊 (ほうしのう)
sporangium

胞子体上に生じ,胞子をつくる無性生殖器官。藻類菌類では単細胞性で,栄養細胞と同形かそれより大きい。コウジカビなどの子囊菌類では子囊 ascus,マツタケなどの担子菌類では担子器basidiumと呼ばれる。陸上生活をするコケ植物と維管束植物では多細胞性の囊状構造である。コケ植物の胞子囊である蒴(さく)capsuleは胞子体の先端に生じる。シダ植物の胞子囊は,ワラビなどのシダ類では小さく,胞子囊壁は薄いが,他の類では大きく,壁も厚い。ヒカゲノカズラ植物などでは葉上に,トクサ植物では胞子囊穂の胞子囊托上につくが,シダ類では葉の裏面または辺縁につく。異形胞子をもつ植物では小胞子囊と大胞子囊がある。裸子植物の小胞子囊は小胞子囊穂の小胞子葉の裏面(ソテツ類,球果類),軸端(イチョウ),おしべに似た構造上(マオウ類)につく。被子植物の小胞子囊はおしべの葯である。両植物とも大胞子囊は認められないが,大胞子は胚珠の中にできる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胞子嚢」の意味・わかりやすい解説

胞子嚢
ほうしのう

胞子を内生するため、嚢状に母体から仕切られて形成されるもので、この中の胞子は胞子嚢胞子といわれる。胞子嚢胞子には不動胞子遊走子があり、遊走子を生ずる胞子嚢は遊走子嚢ともいう。ツユカビのような陸生植物に寄生する卵菌類の胞子嚢は、雨水があれば遊走子を生じ、水がないときには分生子のように発芽して菌糸を生ずる。水生シダなどには大胞子嚢と小胞子嚢とがある。種子植物では胚珠(はいしゅ)が大胞子嚢、花粉袋が小胞子嚢に相当する。

[寺川博典]

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世界大百科事典(旧版)内の胞子嚢の言及

【コケ植物(苔植物)】より

…受精卵は造卵器の中で分裂して胞子体の幼植物(胚)が形成されるが,その後も胞子体は配偶体に寄生し続ける。完成した胞子体は1本の軸からなり,先端に1個の胞子囊(ほうしのう)をつける(コケの胞子囊を蒴(さく)capsuleという)。胞子囊の中で胞子母細胞が減数分裂をして胞子をつくる。…

【シダ植物(羊歯植物)】より

…脈理は遊離脈のものと,いろいろなタイプの網状脈のものがある。葉には胞子囊がつくが,異型胞子性のものには雌性の大胞子囊と雄性の小胞子囊とに区別される。胞子囊内で減数分裂が行われて,核相が単相となった胞子がつくられる。…

【子囊】より

…(1)植物学用語。子囊菌類において有性生殖の後に生じる袋状の胞子囊ascus。多くの場合,円筒形または棍棒状で内部に8個の子囊胞子ascosporeを生じる。…

【胞子】より

…胞子体上にできる無性生殖のための小さい単一の細胞で,発芽,生長して別個体になる。胞子は藻類,菌類では栄養細胞または単細胞性の胞子囊の中に,コケ植物,維管束植物では多細胞からできた胞子囊の中につくられる。藻類と菌類の一部,コケ植物,維管束植物では胞子母細胞が減数分裂して単相の胞子ができ,その他の場合では体細胞分裂によって単相または複相の胞子ができる。…

※「胞子嚢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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