改訂新版 世界大百科事典 「タムルク」の意味・わかりやすい解説
タムルク
Tamlūk
インド北東部,西ベンガル州南部の歴史的港市。人口2万2000(1971)。フーグリ川(15世紀までのガンガー(ガンジス)川本流)河口部に注ぐループナーラーヤナ川西岸に位置する。古名タームラリプティTāmralipti。前3世紀のマウリヤ朝以来12世紀まで,ガンガー川流域の門戸として栄えた。アショーカ王の王子マヒンダがスリランカに仏教伝道に出立した地と伝えられ,周辺からは1~3世紀のローマの遺物が出土している。タームラtāmraは〈銅〉を意味し,古代には銅の輸出港としても知られていた。5世紀に来訪した法顕は〈多摩利帝〉,また7世紀の玄奘と義浄はおのおの〈躭摩栗底〉〈耽摩立底〉と記し,後2者は当時の港市の繁栄と仏教の隆盛を伝えている。今も残るバルガー・ビーマ寺院はかつての仏教寺院をヒンドゥー教寺院に転用したものである。港が浅くなり,13世紀ごろから衰えはじめ,18世紀にはカルカッタ(現,コルカタ)に繁栄の座を譲ったが,現在近くのハルディアではカルカッタ新港(ハルディア港)の近代化が進められている。
執筆者:応地 利明
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