改訂新版 世界大百科事典 「ダミー変数」の意味・わかりやすい解説
ダミー変数 (ダミーへんすう)
dummy variable
擬変数と訳されることもある。計量経済学では,生産量のような定量的に測定された値を示す〈実変数〉のほかに,大規模なストライキの有無や従業員の性別のような数量的に表現できない定性的,属性的なものを分析する必要がある。定性的,属性的な要因を計量経済モデルに取り入れる目的で作られた特別な変数がダミー変数で,通常0または1の値をとる。たとえば,戦時と平和時の消費関数を
Ct=α1+β1Yt+εt ……戦時
Ct=α2+β2Yt+εt ……平和時
とする。Ct,Ytは,それぞれt時点での消費支出,可処分所得である。平和時に0,戦時に1の値をとるダミー変数Dtを使うと二つの式は
Ct=α2+(α1-α2)Dt+β2Yt+(β1-β2)DtYt+εt
となる。戦時効果はα1-α2とβ1-β2のように式に直接現れる。ダミー変数を適切に利用すると,(1)式が単純で理解しやすい,(2)定性的効果が分析できる,(3)標準的な数理・統計・計算操作が使える,(4)統計理論との対応が明らかになる等の利点が生まれる。
執筆者:粟山 規矩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報