大学事典 「『デアリング報告書』」の解説
『デアリング報告書』
デアリングほうこくしょ
イギリス政府の諮問機関として発足した全英高等教育調査委員会(NCIHE)が1997年7月に政府に提出した報告書,『学習社会における高等教育』(イギリス)のことで,次の20年間におけるイギリスの国家的必要性に適う高等教育のあり方を検討および調査した結果をまとめたものである。要点は「国際的な経済競争の時代において,継続的な高等教育の拡充なしにはイギリスの反映と国際的地位を確固たるものとなすことはできない」ということになろう。ただし,その拡充には高等教育への経費抑制および質の維持を保持したままという条件も付与されていることを考慮に入れる必要がある。デアリング委員会が組織された1996年当時は,イギリスの高等教育が危機的状況にあるという認識が社会に蔓延していた。高等教育への政府予算の不足により政府と大学は緊張関係にあり,政府は①高等教育政策の大幅な修正,②管理運営・組織改革,③財政配分機関の統一の必要性を再認し,当報告以後,政府は大学教育を無償から有償へ転換し,研究評価や学生ローン制度の導入,産学連携の促進,職業教育に有効な応用准学位(foundation degrees)の導入を実施した。
著者: 秦由美子
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報