改訂新版 世界大百科事典 「デバネズミ」の意味・わかりやすい解説
デバネズミ (出歯鼠)
African mole-rat
アフリカモグラネズミともいう。上下顎(じようかがく)の門歯が巨大で口外に突出した齧歯(げつし)目デバネズミ科Bathyergidaeの哺乳類の総称。かつてはヤマアラシ亜目に属すると考えられていたが,近年では疑われている。サハラ砂漠以南のアフリカに5属8~9種が知られる。体長8~33cm,尾長1~7cm。多くは厚く柔らかな毛でおおわれ,四肢が短く,目と耳介がきわめて小さく,長いつめをもち,鼻孔にふたができるなど穴掘りに適した体つきをしている。地中にすみ,穴掘りは前足のほか大きな門歯を使って土をかじりとる。トンネル内には巣のほか食料貯蔵庫,便所などがある。地中を行動し,地下茎や球根を食べる。ふつう単独で生活する。このうちの1種ハダカデバネズミHeterocephalus glaberは特異で,体毛をほとんど欠く。体長8.0~9.2cm,尾長2.8~4.4cm,体重30~80gで,体はピンクあるいは黄色っぽい。東アフリカの乾燥地帯にすみ,穴掘りはもっぱら門歯で行う。哺乳類中もっとも体温調節能力が低く,体温は32℃と低く,トンネル内の温度は30~32℃,湿度90%に保たれている。飼育下では少なくとも5年の生存記録がある。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報